長崎市のMICE建設計画について(その8)

 9月10日の長崎新聞でも報道されましたが、長崎県が発表した来年度から5年間の中期財政見通しでは、地方交付税の抑制や年間約1万人減少している県の人口を勘案した結果、現状では財源不足を穴埋めする財源調整の3基金(財政調整・退職・県債管理)が、2019年度には枯渇・不足する見込みであり、「来年度予算の編成さえ困難となる危機的な状況」にあります。
 財政状況が厳しいことは、わが国全体に言えることですが、長崎県は特に県税など自主財源に乏しく、高齢化の進展により社会保障関係費が今後も増大し続けることが確実な見通しであり、今後歳出の圧縮など歳入歳出両面で思い切った見直しを進める予定です。
 一方、長崎市では現在、MICE施設だけではなく複数の大型公共事業が計画されています。平成初期の大型事業の公債費支出が終了しつつあることから市の財政は大丈夫とのことですが、上記のように、県が人口減少や交付税抑制によって財政の先行きが非常に厳しいという時に、長崎市は次々と大型施設を造るほどの財政的余裕が本当にあるのでしょうか。また、県の財政状況を見て、県からの財政支援がほとんど望めない状況にあっても、市の財政には影響がないということを市民に対して確約できるのでしょうか。

 市長はJR長崎駅西側の用地購入について、今買わなければ、民間企業が購入して、他の事業が計画されるというような話をしていると聞きます。
 しかしながら、当該土地を民間企業が購入して何らかの事業を計画するということであれば、地域のためには民間活力を活かすべきであり、行政がそれを阻止するのは如何なものでしょうか。
 また、議会でMICE建設について承認されていない中で用地を購入しようとしていることについては、MICEを造らないときには売却しても良いと言っているとも耳にします。
 しかしながら、当該土地については、現在、市がJR貨物から何としても購入しようとしているからこそ68億円という価格なのであって、仮に市がこの金額で購入したからといって、今後この金額或いはそれ以上の金額で第3者に売却するには、民間が当該土地にそれだけの価値を見出し、投資するということにならない限り難しいのではないでしょうか。

 長崎市が計画するMICE施設の建設について、私はこれ迄ホームページ上で複数回にわたり自分なりの意見を述べてまいりました。
 最近では、経済界の方々に会うと、何故私がこのようにMICE建設に反対するのかと盛んに問われます。
 私は、このような経済界の方々に対し、これだけ巨額な投資に対するリスクを自らの企業に置き換えた時に、どのように考えるのかと問い返しています。企業が株主に対して責任を負うのと同様に、行政も市民に対する責任が有り、投資を行う際にはリスク負担を考えた上での判断が必要となります。観光振興や、人口減少・過疎化など地域を取り巻く環境や今後の財政状況等を考えたときに、今は、MICE施設に巨費を投じるよりも、長崎が抱える2つの世界遺産候補の今後の世界遺産登録に向けて、リピーターの確保策や交通アクセスの整備等のハード・ソフト両面にわたる整備を進めることの方が、長崎にとって必要なことだと考えます。
 また、合併自治体に対する交付税措置である「合併算定替」の特例期間が終了するのに伴い、今後合併自治体への交付税が大幅に削減されることになっていたものが、長崎市を中心とする合併自治体の要望により、国はその削減を抑制するために、本庁舎から離れた場所にある支所(旧役場)を維持するために要する費用を、今年度から新たに財政支援することとしました。
 これにより、長崎県内の合併自治体では、26年度予算で当初削減される予定だった交付税額のうち、平均して35.4%、減額が抑制されることとなりました。中でも長崎市は、それが44%と他市に比べて高くなっていますが、それは市役所と支所との距離が遠いために措置されているものであり、この分は例えば野母崎のように、長崎市に合併された周辺部のコミュニティ維持や地域活性化等の対策に使うべきです。
 
 長年政治家として、行政にも携わった私としては、このような子や孫の世代にまで影響を及ぼしかねない同問題については、どうしても見過ごすことが出来ない次第です。