長崎市のMICE建設計画について(その7)

 9月4日の長崎新聞に、長崎市はMICE施設の建設に向けて、JR長崎駅西側のJR貨物の土地を68億円で買い取る特別会計補正予算案を決定し、10日開会の市議会定例会に提案するとの記事がありました。
 建設予定地は、11億円で売却予定だった市有地も含むため、用地費総額は合計79億円に上るとのことです。
 私はこの記事を見て、長崎市は何故、これ程までに用地の買収を急ぐのかという疑問を改めて感じました。

 第一に、施設の建設については、まだ議会で承認されていません。そのような中、今回は用地購入に限った予算を議会へ出すようですが、土地の購入には目的があるべきであり、その利用目的が議会で承認されていないにもかかわらず、土地を購入しようとするのは、行政がやるべきことではなく、通常考えられません。また、過去の例から考えて、議会も利用目的が明らかでない土地の購入について同意することは到底考えられないと思います。
 去る8月19日の毎日新聞によれば、市長はJR貨物に対し、今年度中に用地取得が実現できない場合、JR貨物に対して賃借料を支払うと文書で約束していたとのことですが、議会はこれについて承認したのでしょうか。
 用地交渉自体、議会が同意していない中で行われているならば、その結果、JR貨物との契約で土地の賃借について書かれていたとしても、議会の承認がされていなければ、一般的にこのような場合は、あくまで仮契約であり、今年度中に市が買い上げなくても、市が賃借料を支払わなければならない義務は発生しないのではないでしょうか。
 市長が独断で行った約束に過ぎず、このように拙速に用地を購入すべきではないと考えます。又、このような形で物事を進め、結果的に議会に責任を押しつけることは如何なものでしょうか。

 また、昨年12月にはIR(カジノを含めた複合観光施設)推進法案が議員立法で国会に提出されており、次期国会で継続審議されることとなっています。
 この法案が成立すれば、全国で認定された区域(数カ所)においてカジノ施設及び会議場、レクリエーション、展示、宿泊施設等が民間事業者により一体的に整備されることとなり、IRが具体化していく見込みです。長崎県でもハウステンボスが認定を目指しており、実現すれば大きな経済波及効果が期待されています。
 IRは、コンベンション施設も含めた総合的な複合施設となるため、IRとして認定されたところには、様々な大会や学会、展示会などコンベンションの開催が集中することが想定され、集客力の面で優位性が高くなります。一方、他都市はコンベンション誘致の競争力が劣ることになるのではないかと考えられます。
 このことから、MICE施設を整備するか否かは、IRがどうなるのか、その行方を見極めてからの方が良いのではないかと、私は考えます。

 なお、去る9月2日に開催された市議会環境経済委員会において、コンベンションを企画・運営する専門業者(PCO)からヒアリングを行った結果、長崎は大学の応援があるという点からも成功の可能性は高いという話があったということが報道されています。
 しかしながら、全国大会規模の学会は年間でも開催数が限られていること、また、200~300人規模の医学関係の学会は、最近は特に経費節減のために、学外ではなく大学の構内で行うことが多くなったという現実があります。
 そもそもPCOはコンベンションの運営業者であり、ある意味、長崎でのMICE施設の運営を目指している当事者であることから、現時点で厳しい見通し、否定的なことを述べるはずがありません。
 例えば、運営を請け負うPCOが、単に見通しを示すだけではなく、県外からの誘客を中心に一定数を確保することについて保証し、それが達成できない場合は確実に責任を負うということであれば理解も出来ますが、その確約もなく、ヒアリングの結果だけを鵜呑みにするのは如何なものかと思います。
 計画の是非については、もっと客観的な立場からの賛否両論を踏まえて、検討を行うべきと考えます。