長崎市のMICE建設計画について(その5)

 長崎市で検討されているMICE建設計画は、これまでも述べてきた通り、約216億円(用地費約72億円、建設費約144億円)という、将来の市の財政を左右しかねない大変大きな投資です。
 以前にも述べましたが、過去に県内の各町で建設された箱物施設は、その後十分に活かされることなく、現在の各自治体財政を圧迫しています。これらは何れも造る前に、建設の是非について十分に議論されることなく、公共投資として地域活性化に対する期待ばかりが膨らみ、将来の財政に与える影響や、それがどの程度活用されるかについて楽観視される中、造られました。
 私が同計画について度々取り上げ、懸念を示しているのは、私の知事時代に進めた市町村合併の前に、各町単位で行われた箱物投資のほとんどが失敗に終わった現実を目の当たりにした経験からでもあります。
 今後益々地方分権が進む中で、地方財政も厳しくなる見通しであり、同計画については様々な角度からの検討が必要と考えますが、一方で、地元メディアでも十分な情報提供がなされておらず、市民の皆様がこれを考える上で客観的情報が十分に得られているとは言えないのではないかと考えます。
 長崎市などが5月に主催したMICE推進のためのフォーラムについては、施設の必要性など同フォーラムで説明された内容について、新聞の一面ほとんどを割いて詳細が報道されましたが、建設によるデメリットや、同計画に関する市議会や県議会の議論については地元メディアで報道されていません。
 以前も触れましたが、市が市民の意見を聞いてもいない今年の3月時点で、既に長崎市が用地取得についてJR貨物と大筋合意していたことを示す文書が市議会に提出され、議論となりましたが、これについても地元メディアでは明らかにされておりません。
 過去に県立美術館や博物館を建設する際にも賛否両論、様々な議論があり、その際にはメディアで大きく取り上げられましたが、それに比べると今回はあまり取り上げられておらず、これほど大きな問題となっているにも関わらず、なぜ地元メディアが取り上げないのか、不思議でなりません。
 このような大きな公共投資で、賛否両論があるものについては、市民の皆様が双方の主張、情報を知りたがっており、地元メディアによる積極的な報道が期待されていると考えます。
 集団的自衛権のような国政上の大きな問題や、諫干のような長崎県にとって最大の課題を報道することも重要ではありますが、同計画は県の最大都市である長崎市の命運を左右しかねない大きな問題であり、このようなことについてもメリット・デメリット両面からの客観的情報・分析を行い、県民に対して情報提供する責任が地元メディアにはあるのではないかと考えます。
 公共事業については、投資が行われた後には批判的な論調で大きく報道される傾向がありますが、事後ではなく事前に地元メディアは専門家の意見等も踏まえて分析を行うなど、積極的に取り上げていくことで、市民が適切な判断を行うための情報を提供する役目を果たしてもらいたいものです。