長崎市のMICE建設計画について(その3)

 去る6月16日の「長崎市のMICE建設計画について(その2)」の中で、長崎市が6月議会に、MICE施設の計画予定地における、土壌汚染の状況を把握するための調査費を含む補正予算案を提出したことについて、私の意見を申し述べましたが、翌17日に長崎市議会は同調査費を含む補正予算案を可決しました。
 これについて長崎市は「建設ありきではない」と言っていますが、本来であれば、このような調査費を含む予算案は、議会で用地購入の許可を得てから出すのが常識であると私は考えます。また議会は、土地取得の準備ではないことを念押しして可決したということではありますが、これを認めるということは、結果的にMICE建設と用地購入に、ある程度理解を示しているということになるのではないでしょうか。議会としても将来の市の財政に関わる重要な問題であるだけに、慎重に審議してもらいたいものです。

 毎日新聞によれば、昨年11月に長崎財界が総理官邸を訪問し、MICE施設の建設候補地を所有し、国が実質的に100%株主であるJR貨物と長崎市との土地売買について、政府に対して協力を求め、これを受けて3月にJR貨物が長崎市に対して、当該土地の売却条件を提示したことが明らかになっています。
 JR貨物が長崎市長宛に提示した文書を見ると、「譲渡価格は、区画整理事業完了後の土地価格をベースとし、さらに当該MICEセンター事業及び周辺の街づくり事業等の土地利用計画を反映させた土地評価を基本」としているほか、長崎市による土壌汚染調査が前提となっており、これ以降、この条件に基づいて手続きが進められていることが明白となっています。
 長崎市が試算した用地取得費72億円は上記前提に従って試算されているものと思われますが、実際に区画整理後に土地の価格が試算通りに上昇する保証はなく、これが適正価格なのか否かも議論されておりません。
 MICE建設については、このような問題を一つ一つクリアにした上で、議会と市民の同意を得て土壌汚染調査や売買価格の交渉を行うのが、本来の行政のあり方であると改めて考える次第です。

 なお、6月17日の毎日新聞記事で、この土地については、私が知事在職中の2009年、医師確保等のために市民病院と原爆病院を統合した高機能病院の建設を長崎市に提案したものの、「用地取得の問題が不確定だ」などとして田上市長に拒否されたと書かれておりますが、これは事実と異なります。
 確かに当時は、医師の新たな臨床研修制度の導入により地域における医師不足問題が顕在化し、医師の確保が課題となる中で、長崎大学医学部長、国立病院長崎医療センターや市民病院の院長先生等とも協議し、医師確保のために一般の民間病院とは競合しない、国立病院長崎医療センター、長崎大学と同格の基幹病院を長崎に造る必要があるということになり、これを計画しました。
 しかしながら、この計画が長崎市から断られた理由は、市民病院と原爆病院の職員給与に大きな格差があったこと、両病院を統合するにあたって職員を一度解雇した上で再雇用する手続きが難しかったこと、また被爆者の皆様や地域住民の方々からの反対が強いといったことでした。但し、これについては、私も知事時代に県立多良見病院を民営化し、日本赤十字社に経営委譲しましたが、この時は県立病院の職員を全員解雇し、再雇用に際しては原爆病院と同じ給与体系とし、病院側が必要な職員のみ採用されることとした前例があります。
 田上市長が、市民のためとなる医療施設についてはあっさりと断ったにもかかわらず、このMICE施設については、何故これ程こだわるのでしょうか。

 さらに当時、病院の用地取得については、この計画が公になっていない段階で、私と副知事が直接JR貨物の社長にお会いし、社長から当該土地の売却意向を確認した上でこの計画を公にした経緯があります。その後、田上市長による反対を受けて、この計画が白紙となる旨をJR貨物に対して改めて申し入れたというのが事実です。
 一方、今回の長崎市のMICE建設計画は、昨年11月に市と長崎財界が総理官邸を訪問し、当該土地の売却に対する協力を政府に対し要請しており、この時点で官邸は、同計画に対する地元の理解は当然得られているものと考えたからこそ、その後の協力を積極的に行ったものと考えられます。しかしながら、実際には議会や市民の同意も得られていなかったのが実情であり、この点については官邸に対して迷惑をかけてしまったのではないかと思われます。官邸に対して協力を要請するのであれば、手続き上、議会・市民の同意を得た上で行うべきであり、今回の計画は当初から手順上の問題があったのではないかと思う次第です。