長崎市のMICE建設計画について

 現在、長崎市では大規模な国際会議、学会、展示会などを開催できる大型コンベンション施設(「MICE」)の建設計画について、議会で様々な意見が出ているほか巷でも話題になっています。
 これについて私は、長崎市の財政状況を考えた時に、現在検討されているような多額な投資をして本当に大丈夫なのか、十分な投資効果があるのか、という懸念を持っています。

  MICE施設の建設は全国の各都市で計画されており、九州でも福岡市、熊本市はじめ各地で施設整備が検討されています。
  福岡の場合は、既に大規模MICEの誘致実績を挙げており、全国有数の集客力がありますが、交通の便が良く、一流ホテルをはじめ宿泊施設が充実しており、MICE誘致に積極的な大学も多数あるほか、多くの大企業が九州の拠点として事業所、研究所を置くなどハード・ソフト両面で環境が整っています。
 一方、長崎では長崎大学と長崎市とでコンベンション誘致に関する協定を締結しておりますが、他都市との誘致競争に勝ち、MICE施設を有効に活用して数多くの集客を実現するのは決して容易なことではなく、現在計画される5千人収容可能な施設を建設しても、年間でどれだけ活用されるのかという懸念があります。
 市や財界の中には、箱物さえ造れば多くの集客を見込めるのではないかといった錯覚があるように思われますが、冷静な判断が必要です。

  現在の計画では、土地取得費が約72億円、建設費が約144億円とされ、市の資料によると、このうち国庫補助として交付税措置があることなどから市民の実質負担は約150億円になるとしていますが、この算定は不確定なものです。
 過去に長崎歴史文化博物館や長崎県美術館を整備した際には、地域総合整備事業債により7割の交付税措置がありましたが、現制度では交付税措置も最大で3割しかないことから、大半が市民の負担となります。また、上記博物館や美術館などは公有地(市有地)を適正な価格で購入しましたが、今回のように用地取得費だけで70億円もの費用をかけることには疑問があります。
 長崎市の財政は楽観視できる状況ではありませんし、国の財政事情も厳しく、今後交付税の減少が見込まれる中で、この計画を進めて本当に大丈夫なのかという声は少なくありません。

 長崎市では、他にも取り組むべき課題がハード・ソフト両面で多くあります。
 観光振興の面では、長崎市には多くの観光資源、歴史的建造物がありますが、リピーター確保策は決して十分とは言えず、旅館ホテルの耐震化も求められています。
 また、美術館や博物館、図書館等は市民にとって必要なものと考えられますが、MICE施設は市民にとって本当に必要なものとは言えません。
 長崎市は年間140億円の経済波及効果があると試算しているようですが、これだけ多額な投資をして万一想定した効果が得られなければ、将来にわたり禍根を残すことになりかねず、失敗は許されません。
 このようなことからMICE建設計画については、長期的に見て真に長崎のためになるのか、今後冷静な検討、熟議を経た上で決定すべきと考えます。